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なぜ痛い?ドライソケットのメカニズムを解説
ドライソケットは抜歯後に発生する激しい痛みを伴う合併症ですが、その痛みのメカニズムを理解することで、なぜこれほどまでに辛いのかが分かります。通常、抜歯されると、その穴(抜歯窩)には血液が貯まり、それが凝固して「血餅(けっぺい)」という塊を形成します。この血餅は、抜歯窩の骨を外部の刺激や細菌から保護し、新しい骨や歯肉が再生するための足場となる非常に重要な役割を担っています。血餅が正常に形成され、安定していれば、抜歯後の痛みは徐々に和らぎ、順調に治癒へと向かいます。しかし、何らかの理由でこの血餅が適切に形成されなかったり、早期に失われたりすると、抜歯窩の骨が直接口腔内の環境に露出してしまいます。これがドライソケットの最も直接的な原因です。露出した骨には、神経終末が豊富に存在しています。これらの神経終末が、食べ物の刺激、空気の接触、細菌感染など、あらゆる外部刺激に直接晒されることになります。通常、血餅によって保護されているはずの骨が剥き出しになるため、その刺激は非常に強く、激しい痛みを引き起こします。この痛みは、通常の抜歯後の痛みとは異なり、抜歯後2~4日後にピークを迎え、しばしば耳やこめかみに放散するような強いズキズキとした痛みが特徴です。また、血餅が失われることで、抜歯窩が細菌感染しやすくなります。感染が起こると、炎症がさらに悪化し、痛みが強まるだけでなく、口臭の原因となることもあります。ドライソケットの痛みは、市販の痛み止めではほとんど効果がなく、睡眠を妨げるほど強いことも少なくありません。これは、露出した神経が持続的に刺激され、炎症反応が継続しているためです。また、治癒を促進するはずの血餅がないため、骨の再生も遅れ、治癒期間が長引く傾向にあります。ドライソケットを治療する際には、まず抜歯窩を洗浄し、露出した骨を保護するための薬剤を挿入します。これにより、外部刺激から神経を遮断し、痛みを軽減します。