-
しゃくれ治療の費用と保険適用の境界線
しゃくれを治したいと考えた時に、多くの方が気になるのが治療にかかる費用でしょう。特に、歯科矯正や外科手術となると、高額なイメージがあり、なかなか一歩を踏み出せない原因になっているかもしれません。しゃくれの治療費用は、その治療法によって大きく異なり、また、保険が適用されるかどうかという重要な分岐点が存在します。この違いを正しく理解しておくことが、治療計画を立てる上で不可欠です。まず、歯の傾きだけが原因の「歯性」のしゃくれを、歯科矯正のみで治療する場合、これは基本的に「自由診療」となります。審美的な改善を主な目的とする矯正治療は、健康保険の適用外だからです。費用は、使用する装置の種類(表側ワイヤー、裏側ワイヤー、マウスピース型など)や治療期間、クリニックによって大きく変動しますが、一般的には総額で数十万円から百万円以上かかることが珍しくありません。これは全額自己負担となるため、まとまった資金が必要になります。一方で、しゃくれの原因が顎の骨格のズレにある「骨格性」のもので、噛み合わせや発音、咀嚼といった機能に著しい問題があると診断された場合、その治療は「顎変形症」という病気の治療と見なされます。この「顎変形症」の治療として行われる外科的矯正治療(手術と矯正治療の組み合わせ)は、健康保険の適用対象となります。ただし、保険適用を受けるには、いくつかの条件を満たす必要があります。最も重要なのは、厚生労働大臣が定める施設基準を満たした医療機関(顎口腔機能診断施設)で治療を受けることです。どの歯科医院でも保険が使えるわけではないので、事前に確認が必要です。保険が適用された場合、治療費の自己負担は原則三割となります。それでも手術や入院、長期にわたる矯正治療の費用は高額になりますが、自由診療に比べれば負担は大幅に軽減されます。また、一年間の医療費の合計が一定額を超えた場合に、所得控除を受けられる「医療費控除」の対象にもなります。これにより、確定申告をすることで、納めた税金の一部が還付される可能性があります。自分のしゃくれが保険適用の対象になるのかどうかは、専門医による精密な診断を受けなければ分かりません。費用に関する不安も含め、まずは顎変形症の治療を行っている専門機関で相談してみることが、具体的な費用感を掴むための第一歩です。