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しゃくれの原因と治療法に関する基本的な知識
下顎が上顎よりも前方に突出している状態、いわゆる「しゃくれ」は、専門的には下顎前突症と呼ばれます。この状態は、見た目のコンプレックスにつながるだけでなく、噛み合わせや発音に影響を及ぼすこともあり、多くの方が悩みを抱えています。しゃくれを治すことを考える前に、まずはその原因と、どのような治療法の選択肢があるのかという基本的な知識を理解することが重要です。原因は大きく二つに分けられます。一つは、遺伝的な要因による骨格性の下顎前突です。これは、生まれつき下顎の骨が大きかったり、上顎の成長が不十分であったりするために起こります。ご両親や親族に同様の骨格の方がいる場合、この可能性が考えられます。もう一つは、後天的な要因によるものです。幼少期の指しゃぶりや、舌で下の前歯を押し出す癖、常に口を開けている口呼吸などが長期間続くことで、顎の成長や歯並びに影響を与え、しゃくれのような状態を引き起こすことがあります。こちらは歯性の問題、あるいは機能性の問題と言われます。治療法も、その原因や程度によって大きく異なります。歯の傾きだけが原因である軽度の場合は、歯科矯正治療だけで改善が見込めます。ブラケットとワイヤーを用いた一般的な矯正や、透明なマウスピース型の装置を用いた矯正など、様々な方法があります。これらは歯を動かして正しい噛み合わせを作り、口元の印象を改善することを目的とします。一方で、骨格そのものに大きなズレがある場合は、歯科矯正治療だけでは限界があります。その際に選択肢となるのが、外科的矯正治療です。これは、顎の骨を切って位置をずらし、プレートで固定する手術を伴う治療法で、顎変形症と診断された場合に保険適用となることもあります。手術と聞くと不安に感じるかもしれませんが、噛み合わせの機能と見た目を劇的に改善できる可能性があります。どの治療法が自分に適しているのかを自己判断することは極めて困難です。まずは信頼できる矯正歯科や口腔外科を訪れ、専門家による精密な検査と診断を受けることが、悩みを解決するための確実な第一歩となるのです。