物心ついた頃から、私の横顔にはコンプレックスが住み着いていました。下顎が少し前に出ている、いわゆる「しゃくれ」です。自分ではどうしようもない骨格の問題だと分かっていても、集合写真ではいつも無意識に顎を引き、人前で横顔を見せることを極端に避けていました。それはまるで、見えないけれど重たい鎧を常に身につけているような感覚でした。決定的なきっかけは、大学時代に友人から何気なく言われた一言です。「横から見ると、なんか怒ってるみたいだね」。悪気がないのは分かっていました。しかし、その言葉は鋭い刃のように私の心に突き刺さり、それ以来、私の自己肯定感はさらに深く沈んでいきました。人と話す時も、相手が私の口元を見ているような気がして、自信を持って意見を言うことができなくなりました。社会人になり、経済的な自立を果たした時、私は長年の悩みと向き合う決意をしました。インターネットで情報を集め、勇気を出して矯正歯科のカウンセリングを予約したのです。医師は私の話を丁寧に聞き、精密検査の結果、私の場合は骨格的な問題が大きく、外科手術を伴う治療が最も効果的だと説明してくれました。手術という言葉に一瞬恐怖を感じましたが、それ以上に、この長年の悩みから解放されるかもしれないという希望が勝りました。治療は、想像以上に長い道のりでした。手術前の矯正、そして入院と手術。術後の腫れ上がった自分の顔を鏡で見た時は、本当にこれで良かったのかと不安に襲われました。食事が思うように摂れず、流動食だけの日々が続いた時は、心が折れそうにもなりました。しかし、腫れが引き、少しずつ新しい自分の顔に慣れてくると、明らかな変化に気づき始めました。噛み合わせがぴったりと合い、食べ物がしっかりと噛み砕ける。滑舌が良くなり、言葉が明瞭になった。そして何より、鏡に映る自分の横顔が、もう私を怯えさせるものではなくなっていたのです。治療を終えて数年が経った今、私は人前で笑うことにも、自分の意見を話すことにも、何の躊躇もありません。長年私を縛り付けていた重たい鎧は、もうどこにもありませんでした。治療は、ただ顔の形を変えただけではありません。それは、私の内面に深く根付いていたコンプレックスを取り除き、自信という新しい光を与えてくれた、人生の大きな転機だったのです。
私がしゃくれという名の鎧を脱いだ日のこと