ふとした瞬間、お子様の横顔を見て「あれ、下の歯が前に出ている?」と感じたり、笑った時に下の歯が上の歯を覆う「受け口」に気づいたりすることがあります。成長過程の一時的なものかもしれないと思いつつも、親としては心配になるものです。子供のしゃくれ、つまり受け口(反対咬合)は、早期に気づき、適切に対応することが、将来的な心身の健やかな成長にとって非常に重要になります。まず、子供の受け口の原因を理解することが大切です。親からの遺伝による骨格的な要因もあれば、指しゃぶり、舌を突き出す癖、頬杖、口呼吸といった後天的な癖が原因となっている場合もあります。特に、三歳を過ぎても受け口が改善されない場合や、後天的な癖が顕著に見られる場合は、一度専門家に相談することを検討すべきです。相談先としては、小児歯科や矯正歯科が挙げられます。専門医は、お子様の顎の成長段階や歯並びの状態を評価し、治療が必要かどうか、また治療を開始するのに最適な時期はいつかを判断してくれます。乳歯列期の受け口は、永久歯への生え変わりと共に自然に治るケースもありますが、放置することで骨格的な問題に発展してしまう可能性も否定できません。早期に相談する最大のメリットは、お子様の「成長」を治療に利用できることです。大人の矯正が歯の移動が中心になるのに対し、成長期にある子供の場合は、顎の成長そのものをコントロールする「咬合誘導」という治療が可能です。例えば、上顎の成長を促すための装置を使ったり、口周りの筋肉のバランスを整えるトレーニングを行ったりすることで、骨格的な不調和を改善し、手術を回避できる可能性が高まります。また、舌の正しい位置や正しい飲み込み方を指導する筋機能療法も、後天的な癖が原因の場合には非常に有効です。親として家庭でできることもあります。まずは、指しゃぶりや頬杖などの癖がないか、日常的にお子様の様子を観察し、気づいた時に優しく注意してあげることです。また、鼻炎などで口呼吸になっている場合は、耳鼻咽喉科を受診することも検討しましょう。お子様の受け口に気づいた時、過度に心配したり、お子様を責めたりする必要はありません。それは、お子様の将来のために親が行動を起こす良い機会です。まずは専門家の意見を聞き、正しい知識を得ることから始めましょう。